大阪大学 複合システムデザインのためのX型人材育成

プログラムの概要

機械工学専攻長
久保 司郎 教授
プログラム実施責任者
田中 敏嗣 教授

統合デザイン力教育プログラムとは

 大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻では、機械工学分野における優れた大学院教育を目指して、大学院教育改革に果敢に取り組んでいます。文部科学省「魅力ある大学院教育イニシアティブ」に採択され、2005年度と2006年度の2年間に渡って実施し、高い評価を得た「統合デザイン力教育プログラム」の取り組みに引き続き、その枠組みを基盤とした「複合システムデザインのためのX型人材育成」の提案が文部科学省「大学院教育改革支援プログラム」に採択され、2007年度より3年間に渡って実施することとなりました。この教育プログラムは、アナリシス(解析)系の教育の充実を中心とした取り組みを行い、「統合デザイン力教育プログラム」の成果とを併せて機械工学における大学院教育の総合的な実質化を目指すものです。
 X型人材の「X」は、二つの専門分野の交差、すなわち複合を表しており、X型人材は「領域間の相互作用とトレードオフを含む複合システムに対する課題設定・課題解決能力を有する人材」を意味しています。具体的には、今日の科学技術のフロンティアにおいて重要となりつつあるマルチフィジックス問題に対する解析力の育成を中心とした取り組みによりX型人材の育成を行おうとするものです。本教育プログラムでは、狭義の機械にとどまらず様々なシステムの現象や事象を横断的総合的に取り上げ、それらに潜む個々の原理と相互の連成を理解することを通じて、創造性豊かなリーダーとなる技術者・研究者の育成を目指します。

本プログラムがめざすもの

マルチフィジックス問題の解析能力
⇒複数領域にまたがる専門知識を修得し、それらが連成する問題に対して適切なモデリングと解析を実行する能力
X型複合システムデザインにおける
 実践的解析力・問題解決のための企画力
⇒マルチフィジックス問題における適切な
課題の抽出と解析アプローチの立案能力

本プログラムの要点

博士前期課程(マスターコース)
アナリシス系の「マルチフィジックス解析基礎」では、マルチフィジックス問題のモデリング力と解析力の育成に重点を置き、それらについての基礎と解析事例の講義、典型的課題による総合演習を行います。また、「マルチフィジックス解析展開」では、「基礎」で修得した知識のもとで、あらかじめ答えの用意されていないマルチフィジックス問題に対するプロジェクト演習を行います。「展開」では、同一課題に対するチーム間での競争や報告会でのディベートなどを通じて、様々なアプローチの存在を認識させ、より最適なアプローチの探索を行わせます。また、目的に応じたソフトウエアやハードウエアの選択を可能とする環境整備、独自に構築する問題解決事例データベースシステムによる類似事例の参照などを通じて、総合的で実践的な解析展開力を涵養します。 シンセシス系の「プロダクトデザイン」では、「プロダクトデザイン方法論」で教授される方法論をもとに、産業界から提供される製品設計開発課題についてのプロジェクト演習により、デザインの構想力と総合力を涵養します。
博士後期課程(ドクターコース)
前期課程の各科目で修得した能力をより高度な実践力にまで高めるために、「X型複合システムデザイン実践」を設け、インターンシップ形式で国内外の企業・研究機関での実践的課題に取り組ませることにより、総合力を養成します。また、リーダーシップ力を涵養するために、「X型複合システムデザイン企画」を設け、博士前期課程の「展開」および「プロダクトデザイン」において、プロジェクト課題の立案、チーム活動の指導を行わせて、企画・管理・指導能力を養成します。

課程修了の研究者像

博士前期課程修了の研究者像
実践的なモデリング能力とマルチフィジックス解析能力
●マルチフィジックス問題における個々の物理現象と相互の連成を理解し、解析できる技術者・研究者
●デザインの実現に向けて物理現象を統合できる技術者・研究者
●複合システムデザインにおいて優れたチームワークを発揮できる技術者・研究者
博士後期課程修了の研究者像
マルチフィジックス解析能力
実践的課題への展開力
リーダーシップ力
●マルチフィジックス問題を構成する物理現象の抽出と適切なモデリングを実行できる技術者・研究者
●的確な課題抽出・問題設定と解決のための解析アプローチを立案できる技術者・研究者
●複合システムデザインにおいて優れたリーダシップを発揮できる技術者・研究者